クローズアップ 2018  輝きの女たち

ありふれた日常のかけがえなさを描く
1月公演「よっちゃんうどん」が舞台

日下 渚さん
劇団水中花 代表

 脚本家、演出家、役者の3つの顔を持つ。「今日は役者で行きましょう!」とメイクさん。女優の高畑充希や有村架純に似てかわいい。2児の母とはとても思えない。陽だまりのような温もりが冬の冷たさを溶解する。
 幼少期のミュージカル観劇の体験が「物語の中へ入ってみたい」「物語を作ってみたい」とこの世界を早くに選択した。高校、大学の演劇部を経て「水中花」を設立し、自分の書いた物語を上演してきた。ユニット時代を加えると11年になる。大分にこだわり、地域に根ざした活動に軸足を置く。ありふれた日常の中の人間を描き、現代社会に生きている生身の人間の葛藤をリアリティに表現する。ウソのつけない舞台だ。
 劇団水中花の8回目公演『よっちゃんうどんが ありまして』は、小さな町のたった一軒しかない「よっちゃんうどん」が舞台。亡き父母から店を受け継いだ兄と妹。町を出ていくらしい、歳の離れた弟。町の開発、店の立ち退き話。過疎の町が抱える常連さんたちの願い、兄妹の葛藤…。それぞれの想いを抱えながら『よっちゃんうどん』は今日も営業する。ありふれたうどん屋を舞台に、そこに生きてきた人たちのかけがえのない日常が繰り広げられる。「よっちゃんうどんを観て、ほっこりして帰ってほしい」。
 描きたいものは一貫して人間。それも大事な人のそばで作品づくりをしたいという。そこに生きてきた想い、家族のつながり。大学時代の彼と30才で結婚。出産して書きたいことの視野が広がった。フツーだと思っていたことがフツーではない。子育てはフツーを見つめ直すことを気づかせてくれた。
 来秋、大分で開催される「国民文化祭おおいた2018」でおおいた演劇の会が公演する『花人〜はなびと〜』の脚本を担当する。小2から70才まで参加したオーディションが終り、第一幕の稽古が始まる。「花人は、花を見る人。桜の花見客のことを言います。花はこちらが何者であろうとも美しくそこにあり受け入れてくれます。花を前にありのままでいられる。そこに居ていいんだよ…という現代人の居場所。そんな花を見る人たちの物語です」。この機会を得て大分の演劇の裾野を広げ、盛り上げたいという。
 子どもを出産してから役者は休み、作・演出に集中する。現在、劇団員は12名。演劇志望の若ものが多い。クオリティをあげていきニーズに応える力をつけるのが課題だが、いろんな事情でやめていく団員との別れが辛い。『よっちゃんうどん』の公演は1月21日コンパルホールで昼夜2回上演する。稽古も終盤。近くに暮らす母が子どもの世話を全面的に応援してくれる。劇団水中花は自身にとって気持ちのいい居場所。そこから心を明るく照らす作品が生まれる。


●プロフィール
1983年大分市生まれ。
舞鶴高校で友人と演劇同好会を設立し演劇を始める。大分大学演劇部を経て卒業後、2006年「演劇ユニット水中花」設立。
年2回の定期公演で脚本・演出を担当。地域に根付いた活動を目指し2012年「劇団水中花」へと進化。
定期的な自主公演のほか演劇指導として子どもや社会人向けのワークショップ講師を務める。
2012年NHK大分放送局開局70周年記念ドラマ「無垢の島」の脚本執筆(全国放送にてドラマがギャラクシー賞月間賞受賞)2014年、
劇団水中花で上演した「あなた、咲いた」が2015年九州戯曲賞最終候補作品に選ばれる。
2014年、中沢とおる追悼公演記念フォーラム「大友宗麟」にて準主役の妻・イザベル役として出演。
30才で結婚、2児の母。


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