MY LIFE 2021  輝きの女たち

子龍氏の作品に衝撃を受け書に一途の青春時代
自分の墨を作り見たい書を追求する命の発露

渡邊 史穂呼さん
森田子龍「墨人会」 書家

 書の躍動感が踊り出すようで圧倒された。「風」という文字だった。前衛書道というジャンルなのだろうか、抽象絵画のような感じもした。今年春、トキハ画廊で開いた「木下栄司・渡邊史穂呼 陶と書の二人展」が盛況のうちに終了した。木下さんの素焼きに史穂呼さんの書を描いた器はたくさん売れた。
 前衛芸術の先端を走る森田子龍氏(1912〜1998)の書作品と書論に出会ったのは上野丘高校から立命館大学史学科に入学してすぐ。19才だった。小学生の頃から書道を習い大学でも書道部に属した。既成の公募団体から脱して仲間と墨人会を作り純粋に芸術を掘り下げる子龍氏との出会いが青春時代を書一色にし門下生となった。
 卒業後も書一途だったが30代から40代は結婚、子育て、実家の苦難に遭遇しやむなく中断。自由に筆を取れるようになったのは50代に入ってから。その過去を自分の願わぬ苦労が集結し自身の力の恵み≠ノなって来た事を古希を前に強く意識する。
 目標は自分が見たい書を自分で書くことという。自分の見たい書を追求するための墨は3年かけて自分の墨≠作った。筆の手入れ、越前の和紙を求めるなど紙にもこだわる。絵画と異なり書は一回で書く性質のもの。書き始める一画目の起筆から、書き終って筆を離す収筆までごまかしのない世界。「文字は『人の歴史、哲学』」だという。生活、社会、人類が伝えたい用の美を無心になって書く。時間の経過、リズムが必然的に流れる。観る側は「すごいな〜」が自然な印象。
 本業は学習塾の経営。中学、高校受験を対象に小学生もと幅広く教える。世界史の教諭として教壇に立った経験もある。昨年のコロナ禍のなか、西大分の港の公園で書のパフォーマンスを2回開催、大分駅アミュの紀伊国屋書店で出版イベントに協力し書のパフォーマンスも体験した。08年森田子龍生誕100年記念展にて豊岡市で揮毫、09年湯布院にて初個展、以降、東京・京都で個展や二人展やパフォーマンス展を開いてきたが、現在、墨人会は九州に2人しかいないという貴重な存在。
 書は漢字や言葉を媒介にする芸術。この独特な世界をもっと豊かに力強く表現できるようになりたい、自己満足を追い求めるのではなく原点ははずさず鑑賞者と心で繋がる書を掘り下げていきたいと、熱い心の内を静かに語る。
 この日の撮影のバックに飾った書の軸は「波」。プレーンな白のワンピースに波模様のスカーフが似合って素敵な表紙になった。現在は大分で1人暮らし。無心になって「自分の書」の可能性に対峙する姿。今後、東日本大震災のことを「自分の書で描きたい」と新たな目標をもち作品発表も計画中だ。



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