クローズアップ 2018  輝きの女たち

68才から再び音大で研鑽を積む
6月に初めてピアノリサイタル

時枝 幸子さん
ピアニスト

 71才にして初めて「時枝幸子ピアノリサイタル」を6月24日、iichiko音の泉ホールで開く。「子育てや親の介護をしていたら、この歳になったのね」と屈託ない。
 5才からピアノを始め、緑が丘高校、武蔵野音楽大学ピアノ科を卒業。高校や短大の講師を勤め、結婚後も演奏活動やピアノ教室を開き、ピアノから遠ざかることはなかった。「これ以上ヘタになりたくない」。常に超一流と称される師を仰ぎ東京へレッスンに通ってきた。
 4人の子供を育てあげ、親の介護に14年。30才の時から温めていた「もう一度、大学で学びたい」という思いを行動に移したのは68才の時。武蔵野音大が社会人対象に門を開いた「別科」を受験。2015年と翌16年の2年間、研鑽を積んだ。卒業後はミニ演奏会を開いてきたがリサイタルは初めての挑戦。永岡信幸氏にピアノのレッスンを受けながら練習に熱中する。
 演奏曲目はベートーヴェンの最後のピアノ曲『バガテルop126』。バガテルとは「何でもない」「さりげない」の意味で全曲を弾く。弾き慣れたシューマンの『子供の情景』(12曲)は心地よく。最後はリスト巡礼の年2年「イタリア」より。マリー・ダグー伯爵夫人とリストがふたりで滞在したイタリアの旅。「激しい恋や崇高な恋」が音色の奥深くに潜んでいるという。
 ピアノに詳しい知人は「難しい選曲。疲れない?」というが、中古を購入したスタンウェイをタッチする指先は軽やか。別科の学生の頃は毎日6時間、今でも自宅で4時間、練習する。「8小節を言葉にしたら」「子供の情景は1曲1曲を個性的に」と納得のいく演奏を自身に課す。「リサイタルを楽しみにしている」という友人の声に「今の私にとっては恐怖です」と返す。意外だが緊張するタイプなのだとか。
 大分で地道に音楽を続けている人たちのために「シェムポーニア」を立ち上げたのは07年。出身大学を問わず発表の場を設け、別科の2年を除き毎年演奏会を開いている。宇佐にある夫の実家で古民家サロンを開設。毎月第3土曜日にコンサートとうたごえを行っている。
 何でもない日常に光や輝きを与え、胸を踊らせるピアノリサイタルはもうすぐ。満足のいく演奏に「終りはありません」。音楽に対しどこまでも真摯に向きあう。


●プロフィール
佐伯市生まれ。5才よりピアノを始める。
大分県立別府緑が丘高校卒。武蔵野音楽大学音学部器楽学科ピアノ専攻、卒業。
佐伯鶴城高等学校及び、大分県立芸術短期大学の非常勤講師を務める。
24才で結婚、広島県呉市に移り住む。
藤井清水の会にてピアノ曲を演奏。その後大分に帰る。演奏活動とピアノ教室を始める。
2007年、地道に勉強を続けている人たちのためにシェムポーニアを立ち上げる。
2015年、2016年武蔵野音楽大学別科に入学、研鑽を積む。
以降、大分の各会場にて演奏会を開く。宇佐にて古民家サロンを開設、コンサートとうたごえを行う。
伊東京子、辛島輝治、永岡信幸各氏にピアノを師事。4人の子どもはそれぞれ独立。自宅にて後進の指導にあたる。


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